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2007年8月28日 (火)

獅子と狛犬

4)2体で左右1対になっている。

狛犬は左右1対になっています。

対にならずに単独で存在しているものがあったら、特別な理由がない限り、それは単に相棒を失ったものです。

さて、この左右1対ですが、注意するべきことがあります。

「狛犬」は、実は1種類の神獣ではない、ということです。

古い文献を見ると、現在は単に「狛犬」と呼んでいるものを、「獅子・狛犬」と呼んでいる例が見られます。

つまり、元来は≪獅子≫と≪狛犬≫という2種類の神獣を対にしたものであると認識されていたわけです。

よく例に出されるのは、狛犬の定義を書いた最も古い文献の一つである『類聚雑要抄』巻四で、そこにはこう書かれています。

左師子於色黄、開口 右胡摩犬於色白、不開口、在角

ここで言う「師子」とは≪獅子≫であり、「胡摩犬」は≪狛犬≫のことです。

つまり、大まかに言うと、対になった「狛犬」のうち、角があるものが≪狛犬≫、角がないものは≪獅子≫だということです。

この「獅子・狛犬」が、やがて単に「狛犬」とまとめて呼ばれるようになったのです。

狛犬について書かれた文章でしばしば「広義の狛犬」「狭義の狛犬」という言い方をするのは、前者は「獅子・狛犬」を総称したものを意味し、後者は「獅子・狛犬」のうちの獅子ではない方を意味する、ということなのです。

ところで、≪獅子≫と≪狛犬≫という2種類の神獣を1対とする形式は、しかし、やがて厳密には守られなくなります。

特に参道狛犬では、種類や地域によって差はあるものの、19世紀あたりから角が失われていく傾向にあります。

角がないということは、これは≪獅子≫ということになります。

近代以降の「狛犬」は、実はその多くが≪獅子≫2体を1対にしたものとなっています。

にも関わらず、名称としては「狛犬」が定着してしまっているのです。

大変皮肉なことです。

そこまで考えるとややこしくなるので、

4)「狛犬」は2体で左右1対になっているが、厳密には≪獅子≫と≪狛犬≫という2種類の神獣に分けることができる。

ということにしておきましょう。

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