« グリフィンは中国にやって来たか | トップページ | 辟邪・天禄について(2) »

2007年9月19日 (水)

辟邪・天禄について(1)

ここで一旦、本題から離れます。

中国の神獣の中で、狛犬の起源について考察する際、必ず言及されるものに≪辟邪≫と≪天禄≫があります。

それは、≪辟邪≫と≪天禄≫が異なる名を持つ神獣でありながら一対のものとして扱われているという点と、その両者の違いが角の本数で表現されるという点が、日本風の≪獅子≫≪狛犬≫と類似しているからです。

しかし、この≪辟邪≫≪天禄≫という神獣には、よくわからない点が多々あります。

例えば、「漢書・西域伝」に対する孟康(三国時代)の注には「桃抜一名符抜。似鹿、長尾。一角者或為天鹿、両角者或為辟邪。」とあるそうです。

つまり、≪桃抜≫あるいは≪符抜≫と総称されるもののうち、一角のものは≪天鹿(天禄)≫、二角のものは≪辟邪≫だということです。

しかし、「後漢書・班超伝」には「符抜形似麟而無角」という注が付されているのだそうです。

孟康の注の通り、≪符抜≫が≪辟邪≫≪天禄≫の総称なのだとしたら、これでは≪辟邪≫も≪天禄≫も無角ということになってしまいます。

また「麟に似ている」というからには麒麟に似ているものの、それとは別の神獣ということになります。

「後漢書・粛宗孝章帝紀」には先日触れた章和元年(87年)の月氏国からのライオンの献上について、≪扶抜≫と≪師子≫を献上したと記述されているそうです。

≪扶抜≫が≪符抜≫ならば、≪辟邪≫≪天禄≫は≪獅子≫とは別のものということになります。

古代中国の地誌である「水経注」の記述には、後漢の熹平年間(172177)に、ある人が仏堂を建設し、死後その近くに埋葬されたという話があり、その墓について「隧前に獅子天鹿」があったと書かれているそうです。

ここでは≪天鹿(天禄)≫を≪獅子≫と並べています。

原典にあたっていないのではっきりしないのですが、この記述が≪天禄≫と≪獅子≫を対にしているということを意味しているのなら、≪獅子≫と≪辟邪≫を同一視しているように見えます。

逆に、≪天禄≫と≪獅子≫が各1対という意味なら、≪天禄≫のみで対を成して≪辟邪≫が除外され、≪天禄≫と≪獅子≫は別のものということになります。

一方で、「辟邪」という言葉は、それ自体「邪悪を避ける」という意味であり、神獣の名称と言うよりは、その役割を述べているものとも受け取れます。

どうも文字を追いかけていても、より混乱していくばかりのようです。

« グリフィンは中国にやって来たか | トップページ | 辟邪・天禄について(2) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« グリフィンは中国にやって来たか | トップページ | 辟邪・天禄について(2) »