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2007年9月11日 (火)

グリフィンについて

この後の話に関わってくるので、ここで一旦横にそれて、グリフィンについて触れておきます。

グリフィンというのは、ライオンとワシを合成した神獣です。

その姿を、私はある時期まで『ワシの翼を持つライオン』だと思ってきました。

しかし、≪グリフィン≫という言葉で呼ばれる神獣には、それだけではない様々なバリエーションがあるのです。

合成されるのはライオンとワシの2種類ですが、身体の個々のパーツをライオンにするかワシにするかで、異なる複数の姿が生まれるのです。

まず、頭部をライオンにするかワシにするかで大きく二分できます。これを獅子グリフィンと鷲グリフィンと呼び分けています。

さらに尻尾をライオンのものにするか、鷲のものにするかという区別もあります。

また、4本の足を、全てライオンにするか、全てワシにするか、前足はワシで後足をライオンにするか、逆に前足をライオンにして後足をワシにするか、ということによって4つのパターンが生まれます。

胴体は基本的にライオンですが、ワシの足を持つ場合はその付根部分はワシの胴体になることもあります。

おおむね翼を持っていますが、翼がないものもあります。

そうなってくると、これはひとつの≪グリフィン≫という名前で呼ばれるべきものなのかという疑問が生じます。

特に、頭部がライオンのものとワシのものを同じ名で呼ぶことには、抵抗を感じます。

≪グリフィン≫または≪グリフォン≫という呼び名は、古代ギリシア語の≪グリュプス≫に由来するものです。

実のところ、それ以外の古代メソポタミアに存在したであろう呼び名が長い時間の中で埋もれてしまったために、唯一伝わった≪グリュプス≫=≪グリフィン≫によって代表させているということのようです。

つまり≪グリフィン≫とは『ライオンとワシを合成して生まれた複数の神獣の総称』と捉えるべき名称であると言えるでしょう。

グリフィンに含められたり、同列に論じられたりするもののうちで、固有の名称がわかっているものもあります。

○アンズー

アンズーはアッカド語で、シュメル語ではイムドゥグドゥとも呼ばれるようです。

頭部のみライオンとなったワシ(猛禽類)です。

ウバイド遺跡出土の銅製パネル(BC2500年頃 大英博物館所蔵)が代表的遺物です。

○ウガッル

アッカド王朝期(BC24BC22世紀)に広がったもののようです。

前半身=頭+前足がライオン、後半身=尾+後足がワシで、翼を持っています。

○ムシュフシュ

≪バビロンの龍≫とも呼ばれる蛇を主体とした神獣です。

早い時期から存在していましたが、アッカド王朝期あたりから前足がライオン、後足がワシとなり、翼を持つようになります。

名称のことは別にしても、≪グリフィン≫には地域性・時代性が存在しています。

・後足をワシ、前足をライオンとするものは主にメソポタミアに勃興したペルシャやバビロニア、アッシリアなどに見られる。

・アッカド王朝期より前は、上の項目とは逆にメソポタミアでも前足をワシ、後足をライオンとしていた。

・全てライオンの足にするのはシリア以西のギリシャ、エーゲ海に見られる。

・エジプトでは鷲グリフィンしか見られない。

・ギリシャも後にアケメネス朝ペルシャの影響を受けるまでは鷲グリフィンのみである。

・アケメネス朝ペルシャでは獅子グリフィンも鷲グリフィンも両方見られる。

・アケメネス朝ペルシャではグリフィンが頭部に羊あるいは山羊風の曲がった角を持つ。

・クラシック期ギリシャのグリフィンは後頭部から背中にかけて背びれを持つ。

大雑把な把握の仕方ではありますが、細かいことを言い始めるときりがないので、このぐらいにしておきます。

  

なおこの項目は「グリフィンの飛翔」(林俊雄 雄山閣 2006年)と「古代メソポタミアの神々」を主に参照しました。

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