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2007年9月 1日 (土)

赤く塗られた狛犬

次に進む前に幕間として、狛犬をめぐる伝説や信仰を紹介してみようと思います。

徳島の狛犬について考察した「猪子芳明の狛犬ギャラリイ」というサイトがありました。

そこに「お亀千軒の狛犬」という伝説が紹介されていました。

今回、ご紹介しようとして久しぶりにアクセスしてみたところ、知らぬうちに閉鎖されていました。
インターネット・アーカイブで保存されているページにリンクをつけておきますが、念のため、ここに転載します。

徳島市の津田川口から4Km位の沖合いに、お亀千軒といわれた大きに島があったといわれています。千軒といわれたほど沢山の漁師が、その島に住んでいたということです。島の人たちは、みんなよく働き、海の幸にも恵まれていたので、平和に暮らしをしていました。
その島には、古くからの言い伝えがありました.それは、島の鎮守の森にある「ししこま」の顔が赤くなると、この島に一大事が起こるということでした。島の人たちは、誰もそれを信じて疑いませんでした。
ところが、その島に一人の怠け者がいました。働きざかりの若者だというのに、海辺で昼寝ばかりしていて、なにか面白し事は起こらないかとか、島の人たちをおどろかせるようないたずらは出来ないものかとか考えていました。
ある日のこと。
「ああ、退屈じゃ。いっちょ、村の者をおどかしてやれ。」と、晩になるのを待ちかねて、鎮守の森に、こっそり忍び込みました。そして、「ししこま」の顔を紅がらで、赤く塗りつぶしてしまいました。
あくる朝。
その島には、いつも朝のお参りをかがさない、信心深いじいさんとばあさんがいましたが、真っ赤になった「ししこま」の顔を見たとたん、腰をぬかすほどびっくり仰天しました。
〔大変だぁー。「ししこま」の顔が真っ赤だぁー。はよう逃げんとあぶないぞー〕と、二人は島を駆け回って言いふらしました。島の人たちも、「それ、一大事じゃ。」と、急いで荷物を取りまとめて、船に積み込み、それぞれに島から逃げ出しました。
あとに残ったのはたった一人、あの怠け者だけだったのでした。
ところが、どうしたことか、空は俄にかき曇り、カミナリがなり、天地が鳴り響くようなものすごい音とともに、島は、あっというまに海の底に沈んでしまいました。
あの怠け者もろとも・・・・。
お亀千軒は、この時沈んでなくなったといわれています。
お亀千軒があったと言われている海上には、今でも引き潮どきになると、その昔、山の頂上だったところが、カメの甲羅のような形をして、波間にに見え隠れしています。

ある本を読んでいて、これとそっくりな伝説に出会いました。

大分県の別府湾にかつて≪瓜生島≫という島があったが、水没して無くなった、という伝説があるそうです。
その水没にまつわる伝説が、≪お亀千軒≫のものとそっくりなのです。

違いは、瓜生島の方は、赤く塗られるのが神社の神像で、塗るのは民の迷信深さに立腹した医者である、という点ぐらいです。

その本には、この伝説の祖形は中国の伝説集「捜神記」にあるとして、その話が紹介されています。
そこで所持している東洋文庫版の「捜神記」をみてみたところ、第326話に『城門の血』という話がありました。
要約すると、こういう話です。

始皇帝の時代、長水県(現・浙江省)でこのような童歌が流行った。

お城のご門が血によごれ
お城は沈んで湖になるぞ

これを耳にした老婆が、心配になり、毎朝城門を見に行っていたところ、門衛の隊長に怪しまれ、捕らえられそうになった。
そこで、老婆が事情を話すと、門衛の隊長は何を思ったか、城門に犬の血を塗りつけた。
それを見た老婆は慌てて逃げ出したが、果たして、町は洪水に襲われ、湖と化してしまった。

確かに、基本は共通しています。

異なっているのは、「捜神記」の話には神仏が関わっていないことです。

この「捜神記」の話を知っていた誰かが、これを日本に置き換えるとともに、神仏とは関わりのなかった話を信仰の大事さを訴える様な内容に構成し直した、ということなのでしょう。

興味深い伝説だと思います。

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コメント

もう一つ、似た話があります。
神話への門というサイト(今はもう無いようです)に載っていた、漢民族の神話〜石獅子の洪水〜という話です。
以前、「狛犬の杜」に転載させて頂いたものですが、以下少し長めですが…

少年は一人の老婆と出会い、老婆の世話をするようになった。少年が老婆についた虱を取っていてあげると、老婆は、この虱をツボの中に入れ庭に埋めておき、もし、石獅子の目が赤くなった時には、世界に洪水が起きるので、その時にこのツボを掘り出すように言い、そして、洪水が起きてもいいように小さな船を作っておくように言った。それから毎日、少年は石獅子を見に行っていたが、老婆との話を知った男が石獅子の目を赤く塗った。少年は老婆に石獅子の目が赤くなったことを知らせると、老婆はツボを掘り出すように言った。ツボの中には真珠が詰まっており、小船は大きくなり人が乗れるほどの大きさの船になった。老婆は少年に、流れてきた動物を救いなさい。但し、黒い頭の男は絶対助けてはならないと伝え姿を消した。少年と母親が船に乗ると、世界に洪水が起きた。少年は溺れている動物を助け、黒い頭の男も助けた。洪水が収まり、動物が船を降りると小船は小さくなり、動物と男は去っていった。だが、男はツボの中の真珠を欲しがり親子を殺そうとするが、動物達が戻ってきて親子を男から救った。

>あゆはさん
コメントありがとうございます。
「狛犬の杜」全集、斜め読みだったので見落としていました。
それにしてもこの伝説、なんだかノアの箱舟に似すぎていて、引っかかりますね。
成立年代が新しいんじゃないでしょうか。

見落としついでに、菊池寛の狛犬小説の話も、「お亀千軒」の伝説にそっくりなんですね。
小説のタイトルって判明したんですか?

いや、それはどちらかというと私の商売寄りの話ですね(苦笑)

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