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2007年10月26日 (金)

成立期の狛犬(2)

一方、仏像に付随する獅子ではなく、天皇などに随うものとして独立した≪狛犬(獅子・狛犬)≫、いわば調度としての≪狛犬≫はどうでしょう。

京都国立博物館図録『獅子・狛犬』(1995)では、京都の東寺・観智院に伝わったとされる狛犬像を、9世紀前半まで遡る現存最古例としています。

しかしながら、狛犬そのものには製作や奉納の時期を示す銘文はなく、裏付けとなる文献もないようです。

したがって、平安時代のものとすることの妥当性はともかく、年代については明確とは言えません。

京博の『獅子・狛犬』に掲載されている狛犬像の中では、奈良・薬師寺の鎮守・休岡八幡宮の狛犬が、年銘のあるものとして一番古いようです。

奉納の年月日が墨書されており、その「□治元年」と読める部分が、寛治元年(1087)と見られています。

ただし、墨書の場所が洲浜座の裏なので、本体と一致するものかは不明です。

ちなみに、この狛犬の姿は先に触れた法隆寺五重塔内に現存する塑像の獅子像とよく似ており、興味深いものです。

狛犬本体の胎内銘としては姫路市の書写山円教寺に伝わる狛犬の頭部から弘長元年(1261)銘が見つかっており、製作年がわかるものとしては最古例になるようです。

もちろん、年銘が確実なものが鎌倉時代であるからといって、平安時代には調度としての≪狛犬≫がなかったというわけではありません。

1000年頃の成立とされる『枕草子』では、全文の語彙検索ができるサイトによると、「狛犬」の語が3ヶ所に出てきます。

そのうち2ヶ所は舞楽の狛犬ですが、1ヶ所は調度としての狛犬に触れたものです。

御簾よりはじめて、昨日かけたるなめり、御室礼、獅子・狛犬など、「いつのほどにか入りゐけむ」とぞ、をかしき

という二七八段の記述がそれです。

調度としての≪狛犬≫について定義した古文献として度々取り上げている『類従雑要抄』も平安時代末頃の成立とされています。

ちなみにその記述は

后宮御料ニ用濱床時者帳帷(長一丈於幅別一尺三寸五分)

他事如前(但立師子形時者帳前南方帷末之表ニ戸之左右之際ニ相向天立之左師子〔於色黄口開〕右胡摩犬〔於色白不開口在角〕)

(文字の大きさを変えて書かれており、( )内は地の文より小さい文字、〔 〕内はそれよりさらに小さな文字である)

となっており、≪獅子・狛犬≫の総称として「師子形」の語が用いられているのは、興味深いところです。

以上は、代表的な狛犬についての書籍や論述に出てくるものですが、それを見る限りでは、仏像の獅子が調度としての≪狛犬≫として独立するよりも前に、舞楽としての≪狛犬≫が成立していたことにはなりそうです。

となると、「獅子舞」の歴史について確認しなければなりませんが、それは別の機会にしたいと思います。

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