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2007年11月12日 (月)

鎌倉時代(3)

さて、もうひとつの新しい要素である陶製の狛犬です。

陶磁器の狛犬は、鎌倉時代の末頃、13世紀末から14世紀初の時期に登場したようです。
産地は瀬戸・美濃地方で、高さ20cm内外の小型のものです。
江戸時代より前のものは、高さに比較して前後が詰まっていて、背筋を立てて、前脚を長く真直ぐに突っ張った形のものがほとんどです。

分布地域も瀬戸・美濃地方を中心とした愛知・岐阜・長野の各県に集中しています。
ただ、この地域から離れた場所でも伝世品や出土品が散見されます。

その伝播には山伏など修験者が関わっていたと考えられています。
時代は室町時代に入りますが、初期のものの一つである愛知・伊勝八幡宮伝世のものに「応永廿五戊戌歳/十二月朔日/熊野/願主浄通」(1413)との墨書銘があることが、その根拠になっています。
ただ、江戸時代より前のものでは有銘のものはこれを含めて4点しかないとのことなので、全てを同様に考えることができるのかは何とも言えません。

初期の伝世品は、代表的作例をもとにして≪伊勝型≫(伊勝八幡宮)、≪根津型≫(根津美術館)、≪深川型≫(愛知県瀬戸市・深川神社)、≪香取型≫(香取神宮)などに分けられています。
この分野で大きな足跡を残した本多静雄は、このうちの≪根津型≫を鎌倉時代まで遡ると考えていたようですが、窯跡の発掘成果などから、現在は否定的なようです。
そのため、伝世品としては鎌倉時代のものはないということになりますが、窯跡から破片が出土しているので、生産されていたことは間違いありません。
愛知県陶磁資料館他で行われた『陶磁のこま犬百面相』展覧会図録の表によれば、鎌倉時代の狛犬片が出土しているのは瀬戸の窯跡(洞山窯など)ばかりのようで、美濃よりも瀬戸が先行していたようです。

このような状況なので、具体例への言及は次の時代にまわしたいと思います。

もう一点、絵画作品に触れておきます。

神仏習合の思想に基づく≪神道曼荼羅≫と呼ばれる絵図があります。
平安時代には製作されていたようですが、現存するものは鎌倉時代のものまでしか遡れないようです。

この中に、神社の社殿が描かれたものがありますが、それを見ると、社殿の外側の縁の部分に向かい合わせに狛犬が置かれています。

平安時代のところで挙げた狛犬に関する文献は舞楽の狛犬か宮中の狛犬に関するもので、社寺の狛犬がどういう状況であるかを記したものはありませんでした。
しかし、こうした絵図によって、現在でもしばしば見られるように外縁に狛犬が置かれていたことがわかります。

あたりまえに見えるようなことでも、やはり裏付けは必要だと思うので、指摘しておきます。

以上、鎌倉時代についてまとめてみると、以下のようになります。

  1. 遺存例が前代より大幅に増加し、狛犬が広範囲に普及したことがうかがえる。
  2. 石造、陶製、また金属でも鉄製という形で、新しい素材のものが出現する。
  3. 付随品が出現する(大宝神社の鈴)。
  4. 九州北部に石造中国獅子、東海・中部に陶製狛犬と、地域的な特徴が出始める。

というところでしょうか。

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