« 平安時代(2) | トップページ | 鎌倉時代(2) »

2007年11月 6日 (火)

鎌倉時代(1)

鎌倉時代に入ると、狛犬の遺存例が増えてきます。

木造の神殿狛犬としては、滋賀・大宝神社、京都・峰定寺)、京都・八坂神社、京都・高山寺(4対)、和歌山・丹生都比売神社、京都・藤森神社の9対が京都国立博物館の図録『獅子・狛犬』に紹介されており、それ以外に『日本の美術279 狛犬』では広島・厳島神社、奈良・手向山神社、奈良・大神神社、兵庫・高売布神社、京都・宇良神社、京都・宇治神社、愛知・瀧山寺、鳥取・三仏寺奥院、石川・白山比咩神社、東京・大国魂神社の名が挙げられています。
丹念に各地の地誌を調べれば、もっと例は出てくるでしょう。

先日、姫路市の書写山円教寺に伝わる狛犬の頭部に弘長元年(1261)銘があることに触れましたが、高売布神社のものには永仁五年(1297)の墨書が阿像の底部にあるそうです。
高山寺のものには、嘉禄元年(1225)に造られたものを天保十年(1839)に補修した旨の墨書がありますが、書かれた場所が州浜座なので、狛犬のことなのかは不明です。
また、藤森神社のものには徳治二年(1307)の銘があります。

共通した作風としては、全体に、どっしりと肉付きが良く、たてがみが豊かであるという印象を受けます。

上記のうち、高山寺の狛犬はそのうちの3対につき、湛慶の作とする説があります。
京博の展示で見たことがありますが、高さ30cmほどの小型の狛犬で、可愛らしい印象があります。

これと、八坂神社・丹生都比売神社あたりの作風が、鎌倉時代を代表するものだと思われます。

一方、この時代の名品として名高いのが大宝神社狛犬です。
これは、現在、石造参道狛犬として広く見られる≪岡崎古代型≫と言われるタイプのもののモデルとなった狛犬です。
引き締まった精悍な体躯、猛々しい表情で、彩色も良く残っており、素晴らしいものです。

しかし、それ以上に注目したいのは、この狛犬が胸元に鈴をつけている点です。

現在広く見られる石造参道狛犬には、玉や牡丹、またそう呼んで良いならば子供など、様々な付随物を伴なう例があります。
狛犬の祖先と言うべき中国獅子にも付随物は多く見られます。

この狛犬の鈴は、日本式の狛犬が付随物を持つ例としては現存最古のものになるのです。
と同時に、これをモデルにした≪岡崎古代型≫以外には、あまり追随したものがない特殊な例でもあります。

鈴そのものの由来は、中国獅子や、文殊菩薩を乗せた獅子座の獅子に見られる瓔珞であろうと思われます。瓔珞では、帯と言うよりバンドに近いようなものに、房飾りや鈴が取り付けられているという形で表現されていますが、この狛犬は鈴しか表現していないという点で特異です。

この狛犬の作者は何を考えてこの狛犬を製作したのか、興味深いところです。

鎌倉時代の金属製狛犬としては、宇都宮市の二荒山神社のものと宮崎・高千穂神社のものが知られています。
いずれも鉄製です。

二荒山神社のものには建治三年(1277)銘が背中に陽刻されています。
その姿は≪狛犬≫ではなく、和犬です。
それでは神使ではないのかと、若干≪狛犬≫と呼ぶことにためらいを覚えますが、「鉄製狛犬」として伝わっているので、従っておきます。

« 平安時代(2) | トップページ | 鎌倉時代(2) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 平安時代(2) | トップページ | 鎌倉時代(2) »