« 風獅爺(1) | トップページ | 神の名の下の蛮行 »

2007年12月26日 (水)

風獅爺(2)

Keirin さて、以上を箇条書きに要約すると、風獅爺とは

1)向かってくる邪気や災厄を防ぐ辟邪物である。
2)立ち上がった獅子の姿を中心にいくつかのバリエーションがある。
3)中心となるのは石造のものである。
4)集落の外周部に設置するものと建物に設置するものがある。

ということになります。

Shokokou こうした特長は、沖縄のシーサーとも共通するもので、故に風獅爺はシーサーの源流のひとつと考えられるわけですが、逆に風獅爺の源流を考えた場合、こうした特長を持つものとして、よく知られたものがあります。

≪石敢当≫です。

中国で生まれたもので、日本では沖縄のものが知られていますが、実は日本全土に広く見られます。
金門島でも瓊林蔡氏宗祠のすぐそばで見つけました。

Sekikantou_1 切石や自然石に『石敢当』とか『泰山石敢当』という文字を刻んだものです。
文字の由来は、≪石≫という名の英雄が、≪敢当≫=無敵であったことにちなんだとか、≪石敢当≫自体が人物名だとする俗説がありますが、史実ではないようです。
おそらくは石そのものの呪力への信仰であろうとされています。
中国の唐代には存在していたと考えられています。

Sekikantou_2 石敢当は、風獅爺同様、向かってくる邪気を防ぐ辟邪物です。
丁字路の突き当たりや袋小路、家の角や四辻に設置します。
瓊林蔡氏宗祠近くのもののように壁面に埋め込んでしまうものや、単立させるものなど様々なものがあります。

様々なものの中には、石の上部に獅子の顔を浮き彫りにし、その下に『石敢当』の文字を刻んだものがあります。
今回の訪問では見られませんでしたが、金門島にもこの種のものが存在しています。

窪徳忠の著書によれば、すぐそばの厦門には石敢当の一種として、「長身の棒状の石獅」があると言います(「増訂 沖縄の習俗と信仰――中国との比較研究――」1974年 東京大学東洋文化研究所)。
図版が無いのでわかりませんが、これは立った姿の風獅爺を連想させる表現です。

また、「金門風獅爺と辟邪信仰」には、金門島の西門里には胸に『石敢当』の文字を刻んだ風獅爺があると書かれています。
写真を見る限り、ある程度は古いもののようですが、実はこれ自体は民国八十五年(1996)に台北で購入したものだということで、由来などは判然としません。

この他、中城正堯は福建省泉州市で見つけた壁に埋め込まれた石獅を紹介しています(「アジア魔除け曼荼羅」1997年 NTT出版)が、これは蔡氏宗祠の風獅爺とよく似ています。

同じ中城正堯が金門島と台湾の間にある澎湖列島で見つけた辟邪石塔を紹介しています。
これは、集落の四方の入り口に小さな切石を台座に載せて立てたもので、『蕭元帥』とか『劉元帥』などという文字が刻まれています。
やはり魔除けの辟邪物です。
『石敢当』を人名とする俗説があることを考えると、その同類とみていいように思えます。

また、「中国獅子雕塑芸術」(朱国栄 1996年 上海書店出版社)に紹介されている獅子像の中には、風獅爺のように棒状になっているわけではありませんが、後足で立ち上がった獅子像が見られます。
造形の母体は南方系獅子で、地域的には長江下流の南京や上海の周辺に多く見られるようです。
残念ながら福建省の例は挙がっていませんが、地域的にそれほどかけ離れているわけではありません。

以上を考え合わせてみると、風獅爺は石敢当と獅子像が融合して出来たものと考えることができるのではないでしょうか。

一方、既に触れたように、風獅爺には建物に設置するものがありますが、その中に≪屋頂風獅爺≫と呼ばれるものがあります。
もっぱら陶器製で、屋根の上に置かれるものです。

Shogun 大きく口を開けた獅子で、獅子のみのものと、獅子に武人が乗ったものがあります。
武人が乗ったものは特に≪瓦将軍≫とも呼ばれているようです。
おそらく、厳密には武人が≪瓦将軍≫なのでしょう。
(写真は宜蘭の河東堂獅子博物館の展示品)。

この≪瓦将軍≫タイプのものを、窪徳忠は台南で見たと言い、中城正堯は泉州のものを紹介しています。

これは、屋根に載せる獅子という点で、沖縄のシーサーのうち屋根獅子と呼ばれるものと非常に類似しており、これもまたシーサーの源流と言えるものだと思われます。

こうしてみると、沖縄でシーサーと呼ばれているものは、事実上、風獅爺そのものである、という気がします。

« 風獅爺(1) | トップページ | 神の名の下の蛮行 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 風獅爺(1) | トップページ | 神の名の下の蛮行 »