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2008年5月 1日 (木)

カナダ先住民と狛犬―その2

さて、マーストン兄弟とのたどたどしい会話の内容について、カナダ先住民の文化についての資料によって掘り下げてみようと考えました。

まず、「自分たちにとっては、神聖な存在や場所を守る動物は熊だ」という言葉ですが、これは言葉通り守り神であるか、彼らの属する≪半族≫を指しているか、≪クレスト≫のことを指しているのではないかと思われます。

≪半族≫制度というのは、一つの部族社会が二つの系統に分れているというもの。
一つの社会の中にワタリガラス族とワシ族とか、クマ族とオオカミ族といった二系統があり、婚姻は必ず異なる半族との間で行われるといった決まりがあると言います。

ちなみに、彼らの世界観の中では、人間と動物は密接な存在だとされているようです。 ≪コースト・セイリッシュ≫には儀式用の仮面があると書きましたが、その儀式用の仮面の中に動物から人間に変身する姿を表現したものがあります。
これは面白いもので、動物の顔の真中が二つに割れてその中に人間の顔がある、という作りになっています。
どうやら、儀式の際に踊りながらこれを開いたり閉じたりするようです。

ところで、興味深いのは、この変身する仮面の動物の顔を開いた状態が、人間の顔を挟んで二頭の動物がいる状態に見えなくもないのです。
それは、殷墟婦好墓から出土した銅鉞に刻まれた、中央に人間の顔を配し、その左右に神獣が2体描かれている図案によく似ているようにも思えます。

≪クレスト≫というのは、紋章のようなもので、それぞれの家系に属しているものです。
この≪クレスト≫はトーテムポールにも刻まれています。

そのトーテムポールですが、「Totem Poles of the Pacific Northwest Coast」(Edward Malin TIMBER PRESS 1986)という本によると、何種類かあるようです。
正確な学術用語がわからないのですが、記念柱(The Memorial Pole)、家の柱(The House Pole)、埋葬柱(Mortuary Pole)、紋章柱あるいは自由柱(The Heraldic or Free-Standing Poles)、家の前の柱(House Frontal Poles)、その他の直立する彫刻(Other Vertical Sculptures)というものが挙げられています。

名称だけ見ると、記念柱や紋章柱・自由柱というものには≪辟邪≫のニュアンスはないような感じで、一方、家の柱、埋葬柱、家の前の柱には、≪辟邪≫のニュアンスが感じられなくもありません。
しかし、いずれも一貫して、一族の≪クレスト≫やその歴史・伝承を刻んでいるもので、辟邪物としての意味はないようです。

ちなみに、マーストン兄弟が言う「歓迎を意味する人間の像」というのは、その他の直立する彫刻に含まれ、厳密にはトーテムポールではないようです。

アイヌに狛犬らしきものが存在しなかったように、カナダ先住民にもそれらしいものは存在しないようです。

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