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2008年6月11日 (水)

「狛」をめぐって

上杉千郷先生の「狛犬事典」に、「狛」という字から導かれた説が紹介されています。

≪白虎≫がもとである、という説です。

こう書けば想像がつくように、「狛」という字の旁の「白」の意味を重視して、それを≪四神≫と称される、4種の霊獣と絡めた説です。

≪四神≫とは、玄武・朱雀・青龍・白虎で、名前に表れているように、黒・赤・青・白の4色に対応しています。
さらに、それぞれ、北・南・東・西の方位に対応しています。

「狛」という字の旁の「白」は、この西の白に由来するものだという考え方から、≪狛犬≫を≪白虎≫に結びつけたものです。

確かに、天子南面の考え方に従って、北側にいて南面する天皇の前方の左右に狛犬を配したならば、天皇から見て左=東が≪獅子≫で、右=西が≪狛犬≫という配置になります。
うまく≪白虎≫の位置に≪狛犬≫が当てはまりそうですが、よく考えてみれば、「それならば≪獅子≫は≪青龍≫なのか?」という問題が生じてしまいます。
しかも、≪青龍≫には角がありますが、≪白虎≫には角がありませんから、そのままだと、無角の≪獅子≫と有角の≪狛犬≫という基本原則と、逆になってしまいます。

それに、いま私は「天子南面」としましたが、宮中の公事を記した「禁秘抄」では清涼殿の御帳の前の南北に狛犬を置くと書かれています。
つまり、狛犬の位置は西とは限りません。

もちろん、この説の言わんとするのは、「白」=「西」=霊界の方向、という観念の流れであって、実際の方位ということではないのでしょうが、それにしても、少々無理があるように思えます。

ちなみに、「狛犬=麒麟」説の坂元義種氏は、『狛犬の名の由来』(「古代の日本と渡来の文化」〔上田正昭編 1997年〕所収)という論文で、「コマ」を表す漢字が

「貊」→「[犭百]」→「狛」

と変化していったと述べています。
これが正しいならば、初めに「白」ありきとはいきません。

その一方で坂元氏は、最終的に「狛」の字に行き着いて、その結果として≪狛犬≫の体色が「白」になったとも述べています。
「類従雑要抄」において、≪師子≫の色を黄、≪胡摩犬≫の色を白としていることを念頭に置いてのことでしょう。

しかし、なんとなく、こじつけのように感じられてしまいます。

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