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2008年6月14日 (土)

隼人と狛犬

「延喜式」の「隼人司」の項目について、昨日触れました。
そこには、隼人が『吠える』場合として

  • 凡元日即位蕃客入朝等儀。
  • 凡踐祚大甞日。
  • 凡遠従駕行者。(略)其駕経国界及山川道路之曲。
  • 凡行幸経宿者。

と記載されています(参照したのは「国史大系」版)。

このうち、『其駕経国界及山川道路之曲』という規定に、興味をひかれます。
この記述は、国の境界や山川・道路が曲がっている所を通過する時には、≪隼人の犬吠え≫が行われるということでしょう。
つまり、これは明らかに≪道の祓い≫です。

それは≪獅子舞≫に通じるものです。

現在でも、獅子舞は祭の際に神輿の先に立って舞われる場合がありますが、これは≪道の祓い≫のための行為です。
制度化された獅子舞は、中国から伝わった伎楽に端を発すると思われますが、その伎楽において、すでに獅子は、行列の露払い役として登場しています。
獅子と同時に登場する赤顔長鼻の人物を≪治道≫と呼ぶところに、≪道の祓い≫という意図が見えます。

いずれ別に「狛犬と獅子舞」という項目を立て、そこで詳しく触れるつもりですが、宮中の舞楽の中には『狛犬』という演目があります。
清少納言は「枕草子」において、行幸から還御する天皇の御輿の先に立って獅子舞とともにその『狛犬』が舞われたことを記しています。
これもまた≪道の祓い≫ということでしょう。

この≪道の祓い≫という点で、舞楽としての『狛犬』と≪隼人の犬吠え≫に類似性があるとなると、ドメスティック過ぎると言って≪隼人の犬吠え≫説を退けるのは、ためらわれます。

また、現存する狛犬の中に、面白いものがあります。

福岡県宗像市の宗像大社の木造神殿狛犬です。

私は実見していませんが、写真で見る限りでは、その体形は、ライオンや犬というよりも、猿か人のように見えます。
隼人をモデルにしたものだと言われれば、そうかもしれないと答えたくなるような代物です。

もっとも、作風からは鎌倉時代のものと推測されているようで、早い時期のものとは言え、狛犬の始まりに位置付けることが可能とは思えません。
また、極めて特殊な姿であり、他に類例がないのも弱いところです。

ただ、それこそ≪隼人の犬吠え≫が次第に行われなくなる時期のものであり、気になる存在であることは確かです。

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