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2008年6月 5日 (木)

狛犬は犬か―その4

「動物信仰事典」(芦田正次郎 北辰堂 平成11年)の『犬・戌』の項目にはこうあります。

犬そのものへの信仰は、その多産と安産性にとどまっているが、守護性についての信仰は、唐獅子と習合した形の「狛犬」によることになった。もっとも狛犬像の中には、純然とした犬像のものもあるが、極めて数は少ない。

ここで言う「習合」とは、「もっとも…」以下の記述に鑑みて、意味的なことにとどまらず、造形的なものも含まれていると考えてもいいでしょう。
つまり、狛犬は、犬と獅子を融合して造型されたものということです。

ありえないことではないだろうと思いますが、やはりひっかかるのは、現存する狛犬が、古いものでも左右の造型に差がないことです。

繰り返しますが、広義の総称としての狛犬は≪獅子≫と狭義の≪狛犬≫を対にしたものです。
その造型上の差は、ほぼ角の有無と口の開閉に集約されると言うことが出来ます。

≪狛犬≫を犬と獅子の融合だとするのなら、なぜ、その≪獅子≫との間に造型上の差がないのでしょうか。

考えてみれば、≪獅子≫の起源は実在するライオンだとしても、身近にライオンが存在しない日本人にとっては想像上の動物であり、その点は≪狛犬≫と変わりはありません。
想像上の動物を具体的に表現する時に、実在する動物のイメージに引きずられることは、ごく自然のことでしょう。
古今東西の神獣・幻獣の多くが、実在の動物のパーツを組み合わせたものになりがちなのも、理由は同じことだと思います。

≪獅子≫も≪狛犬≫も、身近にいる実在の四足獣である犬に肉付けして表現されたと考えるべきなのであって、≪狛犬≫だけを取り出して、≪獅子≫と別に考える必要はないのではないでしょうか。

狛犬が、ライオンよりも犬っぽい雰囲気を持っているからといって、その起源に犬を持ち出すことは、必ずしも適切なことではないのではないかと、私には思えます。
むしろ、「犬」という文字からの連想で後世になって持ち込まれた、後付けの起源説のように感じられるのです。

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