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2008年6月 8日 (日)

角から見た狛犬―その2

坂元義種氏による「狛犬の原像について」(「日本古代国家の展開」所収 1995年刊)という論文があり、その中で、狛犬の源流は麒麟(より細かく言えば≪麟≫)であると唱えられています。

論の大半は伎楽・舞楽と狛犬の関わりについて述べ、≪兕≫と狛犬のことにも触れて、日本において、狛犬は、当初は蹄を持った一角の神獣とみなされていたのではないかと示唆した上で、狛犬の実像は≪麒麟≫であるとしています。

確かに、≪兕≫は牛に似ているとされ、その牛は蹄を持った動物です。

また、狛犬と類似点も多い辟邪・天禄のうち、一角の辟邪については、南朝の頃には≪麒麟≫と称されていたと、曽布川寛氏は「中国美術の図像と様式」(中央公論美術出版 平成18年)の中で指摘しています。

してみると、狛犬も元来は蹄を持った動物ではなかったかと考えることは自然なことですし、源流を麒麟に求めるのも理に適ったことのように思えます。

そもそも、角と言えば、鹿や牛といった蹄を持った動物が連想されやすく、その結果、一角の神獣・幻獣も、蹄を持ったものが多く創造されています。

古代の伝説的な地誌「山海経」を試みに探してみると

かんそ(「かん」:[灌]の[氵]を[月]にしたもの、「そ」:[流] の[氵]を[足]にしたもの)=その状は馬の如く、一つの角が鍍金してある(北山経)

ぼつ馬(「ぼつ」:[馬]偏に[孛])=牛の尾で白い身、一つの角(北山経)

とうとう(「とう」:[羊]偏に[東])=その状は羊の如く、一つの角、一つの目――目は耳の後にあり(北山経)

といったものが見つかります。

また、東洋の一角の神獣を代表するものに≪獬豸≫がいます。
「和漢三才図会」の図版では、蹄があるようには描かれていませんが、文中では「三才図会」からとして「状如羊一角四足」、「説文解字」からとして「似鹿一角」という記述があります。
足についての言及はありませんが、羊も鹿も蹄があります。

このように、一角獣としての狛犬という側面を見ると、蹄のある神獣に起源を求めるのは、妥当なことに思えます。

もっとも、「山海経」を見ると、こんなものも存在します。

猙(そう)=その状は赤い豹の如く、五つの尾、一つの角(西山経)

駮(はく)=その状は馬の如くで白い身、黒い尾、一つの角、虎の牙と爪(西山経)

このうち、≪猙≫などは、「五つの尾」というところが、狛犬像の、ライオンの紐状の尾とは異なる、あの派手な尻尾の姿を彷彿とさせます。
しかも、ヒョウはライオン同様ネコ科ですし、なんとなく気にならないこともありません。

結局、神獣である以上、どうとでも定義でき、何とでも結び付けられる、ということかもしれません。

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