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2008年7月18日 (金)

≪獅子≫と≪狛犬≫の番

昨日触れた「教訓抄」ですが、これは、宮中の楽人の家柄である狛近真が宮中の舞楽について詳述した文献です。

その巻七で「別番様」として「師子」と「狛犬」を併記しています。
ちなみに言うと、その直前には「舞番様」という項目があるので、つまり、「獅子」と「狛犬」は正式の番舞ではないけれども、場合によっては番で舞われることもある、ということのようです。

ここには注記があって、

師子 無答。御願供養舞之。
狛犬 相撲節舞之。有別乱声。序破舞。

と書かれています。
併記されてはいるものの「師子」は「無答」となっているのです。
つまり、本来「師子」は番舞を持たないもののようです。

また、さらに、「造物」という項目で、狛近真は「今尾張得業(圓憲)譜」からの引用として

ウチマカセテハ。師子狛犬トソ。ツカヰ侍ヘケントン。師子ノ答ニモ。狛犬不舞。定有由緒歟。

という記述があります。
うちまかせて獅子と狛犬を番にすることもあるが、獅子の答に狛犬は舞わないもので、そこには何か由緒があるのであろう、ということでしょう。

では、獅子と狛犬を番として舞うのは、どういう場合なのでしょうか。

清少納言の「枕草子」には、以下の記述があります。

二〇八段には、賀茂詣での行幸について

還らせ給ふ御輿の先に、獅子、狛犬など舞ひ、あはれさる事のあらむ、時鳥うち鳴き、頃のほどさへ似るものなかりけむかし。

とあります。
「獅子、狛犬など」とありますから、必ずしも番舞だったとは言い切れませんが、行幸から帰る天皇の輿の前で獅子と狛犬が舞われたということを述べています。

また二六二段は、その冒頭に調度としての『獅子』『狛犬』についての描写もありますが、後半には

おはしまし着きたれば、大門のもとに高麗、唐土の楽して、獅子、狛犬をどり舞ひ、乱声の音、鼓の音にものもおぼへず。こは、生きて仏の国などに来にけるにやあらむと、空に響きあがるやうにおぼゆ。

との記述もあります(参照:「枕草子総索引」松村博司監修 右文書院 昭和42年)。
これは、法興院の積善寺で行われる一切経供養への行幸の場面で、≪門≫との結びつきも感じさせますが、獅子と狛犬が行幸に関係があることは確かでしょう。

つまり、舞楽においては本来は番にはならない獅子と狛犬が、行幸=天皇の前では番になるということになります。

これは、天皇の前に置かれる調度としての『獅子』『狛犬』と重なります。

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