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2008年7月20日 (日)

「蘇芳菲」と≪狛犬≫――その1

話を少し変えます。
この先は蛇足のようなものですが、≪狛犬≫舞と≪獅子≫舞に関係を持ちそうな話題をいくつか取り上げてみます。

上杉千郷先生の「狛犬事典」の第11章の4『行幸の先払いをする獅子舞』の項目に、ある図版が掲載されています。
古代の舞楽を論じる際によく参照されるものに「信西古楽図」というものがあります。
その中のある絵をあげて、このようにキャプションが付されています。

舞楽「狛犬」の図 「蘇芳菲」ともいわれる(『信西古楽図』)

実は、「信西古楽図」のここに挙げられている部分には舞の演目が書かれていません。
ただ、頭上に枝角があることから、多くの論者がこれを≪狛犬≫舞を表した図と考えてきました。
しかし、「教訓抄」に記載された「蘇芳菲」という舞楽の描写が、この図に極めて類似していることから、この図を「蘇芳菲」とする意見もあります。

そのことを指しているのでしょう。

ちなみにその描写とは、

蘇芳菲身。師子姿ナリ。頭如犬頭也。(口細面長。)中実装束如左乗尻装束也。(木帽子。踏懸。糸鞋也。)在子二人。装束如犬。(在面帽子。ハキモノナシ。)
(略)
古記云。(略)此舞体如師子。頭ニ有一角。頭色金色。其身色。詠子二人。面形如出色白。蒙紺帽子。如犬蚑之。

頭に角があること、子を二人伴なうこと、子は履物がない(裸足)であること、などがこの図と一致します。

ただ、すぐにこれを「蘇芳菲」とは言い切れないのは、「信西古楽図」の中には、別に「蘇芳菲」と書かれた図が存在しているからです(リンク先の図の左が「蘇芳菲」とされる図、ちなみに右が「還城楽」)。
そこで、「蘇芳菲」と書かれた図の方は、誤記で、実際は別の舞であるとする説もあります。

「信西古楽図」自体は、日本の古い舞楽の姿を写したものではなく、中国の典籍を書写したものという説が、現在は有力なようです。
だとすると、日本の舞楽とは異なる部分があって当然でしょう。
また、≪狛犬≫が日本で成立したものなら、そこに描かれている可能性は低いということにもなります。

ただ、中国では他の名前で呼ばれていたものを、日本では≪狛犬≫と呼ぶようになったという可能性もあります。

それが「蘇芳菲」なのでしょうか?

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