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2008年7月21日 (月)

「蘇芳菲」と≪狛犬≫――その2

≪獅子≫舞は現代にも伝わっていますから、その姿はわかります。

一方、≪狛犬≫舞は現存しないため、どのようなものかは分りません。
先日「教訓抄」などの記述を取り上げましたが、≪二人立ち≫で口取りを二人伴なうことは分りますが、≪狛犬≫頭がどのようなものかは不明です。
角がある、あるいはその痕跡がある≪獅子≫頭は現存していますが、それを≪狛犬≫と結びつけるのは、結局のところ調度の『狛犬』からの推測であって、その推測が正しいのかどうかは明確ではありません。

「蘇芳菲」も、現代には伝わっていないようです。
ただ、「教訓抄」から、獅子のような姿で、頭上に角があり、子を二人伴なうことが分ります。
しかし、≪一人立ち≫か≪二人立ち≫かは明記されていません。

この≪獅子≫≪狛犬≫「蘇芳菲」の三者の関係はどのようなことになるのでしょうか。

「教訓抄」には、「蘇芳菲」について、昨日触れた以外に、このようにも書かれています。

此曲五月節会。舞御輿之御前。是従弘仁初。競馬行幸奏之。対右狛龍。(小馬形乗。)

つまり、「蘇芳菲」も行幸の行列の前で舞われるものなのです。

同様の事は、「雑秘別録」(1227年成立。「続群書類従」所収)の「蘇芳菲」の項目にもあります。

五月会に武徳殿のこ五月くらべ馬の行幸の御こしのさきに。左にししがしらをかづき。右にこまがたをつくりて。人のりたるやうにて。二行にたちて。左にはそはんび(蘇芳菲)。右にはこまりよう(高麗龍)をふきて。まふよしする也。

ところで、このどちらにも、「蘇芳菲」とともに「狛龍」という演目が舞われています。

実は、「教訓抄」では「別番様」として≪獅子≫≪狛犬≫とともに「蘇芳菲」と「狛龍」も挙げられています。
つまり、常の番舞ではないけれども、行幸の際には番にするということで、そのあたりも、≪狛犬≫と非常によく似ています。

ただし、今のことからも分るように、≪狛犬≫と「蘇芳菲」は、明確に別の舞楽と認識されています。

しかし、「龍鳴抄」(1133年成立。「続群書類従」所収)という史料では「蘇芳菲」について

拍子九。新楽。まひのていこまいぬににたり。二あり。くらべむまの行幸に是をす。船楽にもするによりて。日記に古楽としるしたり。それによりて。世の人これを古楽といふ。もし古楽にあぐる時にはこころあるべし。はじめの拍子をおきて。つぎよりあぐ。

と書いています。
当時の人から見ても「蘇芳菲」と≪狛犬≫は類似していたわけです。

「狛龍」はとりあえず別として、行幸の前で舞われる≪獅子≫≪狛犬≫「蘇芳菲」の三者は、合い似たものであったのでしょう。
つまり、基本的にはいずれも≪獅子≫舞で、伴奏の音楽こそ違えど、姿としては角の有無など、比較的差が少ないものであったのでしょう。

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