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2008年7月19日 (土)

舞楽が先か、調度が先か

行幸と舞楽の≪獅子≫≪狛犬≫の関係は、天皇の御座と調度の『獅子』『狛犬』の関係と類似しています。

しかし、舞楽では≪獅子≫≪狛犬≫は番としては非正規のものでした。
それに対して、調度では『獅子』『狛犬』が正規の組合せになっています。

そう考えると、舞楽と調度の関係には、少々すっきりしないものがあります。

ここで発想を変えてみます。

≪獅子≫≪狛犬≫の組合せは、確かに存在するものの、正式な組合せではありませんでした。
にもかかわらず、なぜ≪獅子≫舞と≪狛犬≫舞は番として舞われたのでしょうか。

私には、通説とは逆の考え方が可能な気がします。

つまり、≪獅子≫舞と≪狛犬≫舞が番舞なので調度としての『獅子』『狛犬』が成立した、のではなくて、調度としての『獅子』『狛犬』の存在を前提として、天皇の前を祓う時だけ≪獅子≫舞と≪狛犬≫舞は番として舞われた、と解釈可能なのではないかと思えるのです。

舞楽の≪狛犬≫が、調度の『狛犬』よりも先にあると考えるのは、確認できる最古の≪こまいぬ≫の語の用例が、舞楽にまつわるものだからです。
しかし、最古といっても年代的は、9世紀初頭のことであり、この時点で≪獅子≫と番で舞われたのかどうかは不明です。
番舞としての≪獅子≫≪狛犬≫を記述したと思われる「枕草子」まで200年ほどの時の隔たりがあります。

一方、調度の『狛犬』を、仏像に付随する獅子像に由来すると考えるならば、そうした獅子像の古例は7世紀に遡ります。

とは言え、調度としての≪狛犬≫に、舞楽としての「狛犬」の成立より明らかに古いものが現存していない以上、これは空論でしかありません。

ただ、舞楽の≪獅子≫≪狛犬≫が、正規の番舞であるならば、何もこんなひねくれたことは考えないのですが、そんな非正規な組合せのものが、天皇の前に置かれる調度として正規なものになってしまうのが、どうしても解せないのです。

このあたりは今後の課題としたいところです。

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