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2008年7月24日 (木)

獅子頭と『狛犬』――その1

例に挙げた古い獅子頭の外見上の特徴を見てみましょう。
そして、同時に、それを調度の『狛犬』と比較してみたいと思います。

資料の参照元である町田市立博物館の図録の解説(田邊三郎助)では、獅子頭には外形上二系統があるとしています。
全体がヘルメットのようにカサ高のものと、扁平なものです。

≪カサ高≫系統は法隆寺・伊奈冨神社・津波倉神社・防府天満宮、≪扁平≫系統は御調八幡宮・丹生神社としています。
これに従うならば、例示したもののうち言及のないものは、知立神社・須波阿須疑神社は≪カサ高≫系統、真木倉神社・諏訪神社(山梨)・諏訪神社(岐阜)・花尾八幡宮・熊野座神社が≪扁平≫系統になります。

この二系統は何を意味するのでしょうか。
製作した工人の流派なのでしょうか。
それとも、舞が異なるのでしょうか。
それはよくわかりません。

『狛犬』にこうした二系統が見られるでしょうか。
東寺のものは≪カサ高≫に見えますが、大宝神社のものは≪扁平≫に見えなくもありません。
ただ、曖昧なもので、はっきり分けられるようなものではなさそうです。

次に耳を見てみます。

調度の『狛犬』の場合、対をなす左右で耳の形状を異にする場合があります。
鎌倉時代以降は阿像が垂耳、吽像が立耳に統一されていくようですが、それ以前ではそれが逆であったり、左右ともに同じだったりと、それぞれで違います。

獅子頭ではどうでしょうか。

正倉院のもので写真のある1点は、耳が極端に大きい立耳です。
『狛犬』では、こういうバランスのものは見られません。

正倉院のものは耳がしっかり固定されているようですが、例示したもののうち、これ以外は別材で作った耳を穴に差し込んだだけで、可動式になっているものが多いようです。
そのため、耳が失われているものが多く、耳の状態が分るのは法隆寺・伊奈冨神社・真木倉神社・津波倉神社・防府天満宮・知立神社・須波阿須疑神社のものだけです。
このうち津波倉神社・防府天満宮だけが垂耳で、あとは立耳になっています。

真木倉神社のものは、ウサギのように細長い立耳で、これも『狛犬』には見られないタイプですが、獅子頭では後年のものでわずかながら類例が見られます。

例示したもののうち、対になっているのは法隆寺だけで、これはいま触れたようにどちらも立耳になっています。
一方、防府天満宮の獅子頭は、実は修理された正平十年(1355)に、同時にこれを模して新たに作られた獅子頭が存在し、これと対のものとして扱われてきました。
そちらは立耳になっており、この獅子頭は立耳と垂耳の組み合わせになっています。

ちなみに、町田市立博物館の図録のカラー図版(リンク先の写真と同じもの)では正平十年(1355)修理の方の耳は立てたような状態で写真が撮られていますが、耳の形は、明らかに途中で折れており、垂耳が本来の姿だと思われます。
事実、解説文の方に付された別アングルからの写真では耳は垂耳となっています。
可動式の耳のため、踊りの中でカラー図版のような位置に動かすこともあるのかもしれませんが、基本的には垂耳であろうと思われます。

それはさておき、南北朝の頃にこういう立耳と垂耳の組み合わせが見られるというのは、どこか『狛犬』と歩調をあわせているようにも感じられます。

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コメント

江戸の獅子頭は、頭がでっぱっているのが、オス(宇津)。平らなのがメス(権九郎)です。町田市の本が手元にないので、その2種類なのかどうかわかりませんが。ちなみに若山社中の獅子舞の大先生、鈴木恭介先生によると、江戸の獅子舞は、権九郎なんだそうです。つまり、メスだそうです。

>栗原紀子様

コメントありがとうございます。
興味深い話をご教示いただき感謝します。

鈴木恭介さんのことを存じ上げなかったのですが、重要無形民俗文化財の継承をされている方なんですね。
画像検索した範囲では江戸里神楽の獅子は一人立ちのようですが、踊る獅子は一匹でしょうか?
また、獅子頭は「カサ高」に見えます

私が「扁平」としているものは、例えば青梅の高水山の三匹獅子で使用しているようなものです。

場所は違いますが、こういうやつです。

http://www.city.kawasaki.jp/880/page/0000000941.html

鈴木さんの言う「宇津」「権九郎」とは、ちょっと違うように感じますが、いかがでしょう?

今頃何をおっしゃるうさぎさんですみません。
確かに。意味がわかりました。
田辺さんの解説を読みました。鶴岡八幡宮の悠久という冊子の26号、獅子舞特集に書いていらっしゃいました。意味がわかりました。確かに扁平とかさ高があるんですね。日本の獅子舞って本当にすばらしいものですね。各地域の風土と人々が獅子舞を育ててきたんですね。                         

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