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2008年7月17日 (木)

≪狛犬≫舞とは

そもそも、≪狛犬≫舞とは、どのようなものなのでしょうか。

舞楽の≪狛犬≫は、現在は失われており、その実態はわかりません。
それがどのようなものであったかは古文献によるしかありません。

例えば、狛近真「教訓抄」(1233成立)には、≪狛犬≫について以下のように記述されています。

(略)相撲用之。舞欲出之時。先吹乱声。(大乱声。)打毬之時。右方以此為勝負楽。仍毎取球発。舞者二人用。[有龍]〈クチトリ〉二人。(用右近将曹以下府生以上)

〈 〉はルビ、( )は小文字の注です。
伴奏の仕方や舞の手順などは煩雑なので省きましたが、つまり、この舞が行われるのは「相撲」の時と「打毬」の時で、≪狛犬≫は二人立ち、これに「口取り」が二人付き添う、ということです。

また、「舞曲口伝」(1509年成立。「群書類従」所収)では

此ハ打毬ノ時。右方為勝負楽。当代コレモナシ。

とあります。
記述は「教訓抄」を下敷きにしているのでしょうが、遅くとも16世紀までには行われなくなっていたようです。

さて、「舞楽要録」(「群書類従」所収)という文献には、様々な行事にともなって行われた舞楽の演題が記録されています。
そのうち『相撲節(すまいのせち)』の項目には、延長六年(928)から保元三年(1158)までの記録があります。
「教訓抄」の指摘通り、ここに≪狛犬≫の記録があり、右舞として≪狛犬≫が13回登場しています。

その際の左舞が獅子舞ならば話が早いのですが、「還城楽」が9回、「見蛇楽」が2回、「陵王」が1回、番の明記がないのが1回となっています。
「舞曲口伝」によれば、「還城楽」と「見蛇楽」は同じものだということなので、実質的には13回中11回は同じ舞と番だったことになります。
これが「狛犬」の正式な番ということになるのでしょう。

「舞曲口伝」によれば、「還城楽」とは、蛇を好んで食べる西国の人(つまり西域の異国人)が蛇を手に入れて悦ぶ姿を模したものだとされていて、獅子は登場しないようです。
一方、一度だけ登場する「陵王」にも、やはり獅子は関係がないようです。

また、番舞の明記がないものは、≪狛犬≫が単独で舞われたということでしょうが、実は直前に「崑崙」の番として「見蛇楽」が舞われており、≪狛犬≫と「見蛇楽(還城楽)」との結びつきを感じなくもありません。

では、「獅子」と「狛犬」は番舞にはならないのでしょうか。

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