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2008年7月27日 (日)

獅子舞の全身像

以上のように、獅子頭については遺存例からその特徴を確認することが出来ます。

ただ、遺存している獅子頭でも、痕跡からたてがみ、眉、ヒゲに何らかの毛が植え込まれていたことはわかりますが、それらの毛はわずかしか残存しておらず、全体としてどのような形状だったのかまではわかりません。
また、胴体に関しては何らかの被り物をしたはずですが、現存していないようで、全身像は不明です。

そうした現物資料からは確認できない点について、しばしば参照されるのが、「年中行事絵巻」です。

平安時代末期に成立した原本は既に失われているようですが、多くの模本が残っています。
以下リンクをつけてあるのは、京都大学図書館がweb上に公開しているものです。

この京都大学文学部所蔵のものからは、都合10頭の獅子舞が発見できました。

まず、巻七の『稲荷祭』の部分に8頭が描かれています。

・楽器を持った人物たちとともに待機しているような2頭の獅子(a・b)
・一団の人々の前で踊る1頭の獅子(c)
・纏のようなものを掲げた列の前を行く5頭の獅子(d・e・f・g・h)

そして、巻十一の『祗園御霊会』の部分に2頭です。

・矛のようなものを持った一団の前で踊る1頭の獅子(i)
・矛のようなものを持った一団の後、神輿の前方で踊る1頭の獅子(j)

これらのうち(c)は、獅子頭の眉・上下の唇・鼻を特に黒くしています。
これは伊奈冨神社の獅子頭の彩色とよく似ており、この絵巻の正確性に対する信用度を高めてくれます。

なお、京都国立博物館の図録「獅子・狛犬」では、別の模本をもとに、(d)~(h)のうちの1頭に角があるとし、それを無角の『師子』と有角の『狛犬』としています。
確かにそちらに掲載された図版(どの模本のものか明記はない)では角があるように見えますが、こちらの京都大学文学部所蔵本では、角ははっきりしません。

さて、これら10頭の姿ですが、細部には違いがわずかに見られるものの、おおむね同様な姿をしています。
その特徴を以下に挙げてみます。

1)二人立ち。
2)たてがみは植毛されていて、直毛。たてがみの中に御幣が混じっている。
3)眉、上顎、下顎に植毛されている。直毛。ものによって植毛されている部分は同じではなく、有無もあるが、この部分にまったく植毛が無いというのは(i)だけ。
4)耳はすべて立耳。
5)背中に毛がある(『稲荷祭』のものはすべて2段だが、『祗園御霊会』のものは1段)。直毛。
6)尻尾はからだ全体にくらべると小ぶり。根元を束ねた直毛。

(1)は文献からもそう判断できます。
また、(4)は獅子頭の遺存例から、おおむね確認できる範囲であり、既に触れています。

それ以外の点については項を改めて、検討してみます。

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