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2008年7月23日 (水)

獅子頭の古例

以上のように、舞楽の≪狛犬≫の実態は、正確に把握することが出来ません。
ただ、「蘇芳菲」を含めて考えることで、≪狛犬≫も広義の獅子舞の一種で、頭や被り物を含めた外観の形態上、≪獅子≫とあまり大きな差はなかったであろうと推測することは許されると思います。

一方、調度の『狛犬』は、狭義の『狛犬』と『獅子』の組合せが正式のものとされつつも、『狛犬』と『獅子』の間には、角を除けば大きな差はないということが、現存資料から確認できます。

ということであれば、獅子舞の外観と調度の『狛犬』の姿を比較してみることは、無意味なことではないでしょう。

そこで、以下、その点を見ていきたいと思います。

それについては、狛犬の成立に関しての考察ということが前提ですので、『狛犬』、獅子舞とも初期の古い資料を対象にしたいところです。

『狛犬』に関しては、以前、「狛犬の歴史」の章で古い時代のもの列挙しました

ここでは、まず、獅子頭の古例を列挙したいと思います。

○奈良時代
正倉院 9点=天平勝宝四年(752)の大仏開眼会に使用と推定

○平安時代
・法隆寺 1対
御調八幡宮(広島) 1点

○鎌倉時代
・日置八幡宮(愛知) 建長四年(1252)*
・伊奈冨神社(三重) 弘安三年(1280)
・丹生神社(広島) 正安三年(1301)
・真木倉神社(岐阜) 嘉元三年(1305)
諏訪神社(山梨) 嘉元三年(1305)
諏訪神社(岐阜) 嘉元四年(1306)(リンク先では4月15日の項目を見てください)
花尾八幡宮(山口) 元亨二年(1322)
津波倉神社(石川) 元亨二年(1322)
・熊野座神社(熊本) 嘉暦三年(1328)
防府天満宮(山口) 正平十年(1355)修理

図録「獅子頭―西日本を中心に―」(町田市立博物館 1997年)の解説文に列挙されているものから、鎌倉時代までのものを並べてみました。
(*:日置八幡宮に関しては新聞報道に基づく)
この他、年銘はないものの鎌倉時代のものとして知立神社(愛知)と須波阿須疑神社(福井)のものも図録には掲載されています。

なお、ここでは省きましたが、南北朝・室町時代以降の獅子頭は数多く現存しています。

文献上に残る記述と比べて、奈良・平安時代の資料が、非常に手薄に感じられます。
『狛犬』も決して多くは残っていませんが、それと比較してもわずかです。

これは結局、獅子頭は実際に儀式や祭礼で使用されるため、消耗、破損してしまうためでしょう。
もちろん、貴重品ですから、極力補修しながら用いたでしょうし、使われなくなっても保管はしていたのでしょうが、儀式や祭礼が連綿と続いていく以上、現役の獅子頭の方が重視されるのは致し方のないことでしょう。

ちなみに、鎌倉時代末期から獅子頭の遺存例が増えることには、信仰に関わる別の理由が存在していると考えられますが、それは後で別項を立てたいと思います。

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